わたしの抱えている「側弯症」という持病について語りたい。【前編】
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わたしには「側弯症」という持病がある。
どういう病気かというと、本来ならまっすぐなはずの背骨が左右に曲がってしまい、背骨が背中から出っ張ってしまう病気のこと。
わたしが側弯症を発症したのは中学2年生のころ。
毎年受けている健康診断を終えた日の夜の出来事だった。
お風呂に入るため服を脱ぎ、湯船にお湯を張ろうと蛇口の前でかがんだ時だった。
たまたまそこに居合わせた妹がこう言った。
「お姉ちゃん、なんか背中が出っ張ってるよ?」
何と返していいか分からず、わたしは「え?」と言うしかなかった。
背骨が出っ張ってる?
どういうこと?
健康診断のときは何も言われなかったのに…
急いで母を呼んで、同じように背中を見てもらったところ、やはり出っ張ってると言われた。
半信半疑で自分の背中に手を回して、触ってみると、右の肩甲骨の下あたりが確かに出っ張っていた。
数日後、すぐに近くの市民病院で診てもらうことになった。
整形外科でレントゲンを撮り、すぐに名前を呼ばれて部屋に入った。
そして自分のレントゲン写真を見た瞬間、わたしは言葉を失った。
本来まっすぐなはずの背骨が、まるで蛇のように曲がりくねった形をしていた。
まもなくして、医者から「突発性の側弯症」だと告げられた。
とくに思春期の女子が発症しやすい病気とのこと。
わたしの場合、猫背が習慣化していたことと、成長期で背骨が他の筋肉組織より早く成長してしまったことが原因だと説明された。
その後、母と医者が何を話していたかは覚えていない。
わたしはレントゲン写真を見つめたまま、ただ黙っていることしかできなかった。
診察後、母が大学病院の紹介状を渡されているのを見て、やっと「これはまずいことになった」と確信した。
***
数日後、わたしと母は紹介された大学病院へ行った。
診察結果は同じ。側弯症だという事実は変わらなかった。
あいかわらず蛇のような形をした背骨のレントゲンを見て、自分の体の一部なのに、なぜだか忌々しく見えた。
「治るんですか?」
わたしより先に母がそう質問した。
その質問に、担当医の先生は申し訳なさそうな表情で答えた。
「分かりません。残念ながら、側弯症を完治させる方法はまだ研究中です。今の私たちにできることは、曲がってしまった背骨を正常な位置に矯正することだけです」
その答えに絶句した。
なんでこんな病気になってしまったの?
なんで治る方法がないの?
そんな思いがぐるぐると頭の中を駆けめぐった。
自分が病気だということに加えて、完治できる手段がない事実を受け止めきれなかった。
ただただ黙って、足下の白い床を見つめることしかできなかった。
その様子を見かねた先生が「大丈夫だよ」と声をかけた。
先生の話によれば、そこまで重症な曲がり具合ではないという。
また、幸いにも今の年齢であれば1〜2年ほどで症状の進行は止まるとのこと。
そして、今なら悪化を防ぐ治療法が2つある。
ひとつ目は、今すぐ手術をすること。
ふたつ目はコルセットによる矯正をすること。
どちらかを選択すれば、骨が曲がるのを防ぎ、位置も少しずつ改善することができるとのこと。
それぞれの治療法は次のとおり。
手術:背中に30センチほどの針金を入れる。針金によって骨を正常な位置に矯正していく。手術後、背中に切れ込みを入れた時の傷が残る。
コルセット:自分の体にあったコルセットを作る。作ったコルセットを毎日着用することで、姿勢と背骨の角度が矯正されていく。
わたしは迷わず、コルセットの矯正を選んだ。
背中に傷を残したくなかったし、体内に針金を入れることが怖くて怖くてたまらなかった。
母はわたしに手術の方を勧めようとしていたが、断固として断った。
絶対に手術はしない。
そう固く誓って、その日から自分で病気を治そうという意識が芽生えた。
***
診断後、わたし専用のコルセット作りがすぐに始まった。
担当技師の先生の前でキャミソール一枚になり、上半身にプラスチックでできた液体を塗りたくられた。
このプラスチックの液体が固まって型になり、その型をもとにコルセットを作るという。
技師の先生は男の人で恥ずかしかったけれど、手術で背中に針金を入れることと比べたら途端に恥ずかしさは消えていった。
それから2ヶ月後。
ようやくコルセットが出来上がった。
コルセットをつけてみると、確かに姿勢がまっすぐになり、背筋がきちんと伸びている感覚があった。
胸のあたりが圧迫されて苦しかったけれど、これで病気が治るのなら我慢しようと思った。
後ろのマジックテープを1人で全部つけるのは大変だったけれど、これで病気を治せるのなら頑張って1人でつけられるようになろうと思った。
そして。
わたしはこの日を境に、このコルセットの矯正が、いかに辛く苦しい治療であるかを思い知ることとなった。
【後編へ続く】